検診車を運転して現場に着くと、もう列ができています。
毎回30人以上。最後尾の方は、30分以上待つこともあります。この景色は、24年ほとんど変わっていません。
先日、ある記事(ITmedia)で目に留まった言葉があります。エイベックスの松浦勝人会長が、noteの連載記事をほぼAIとのやり取りだけで作っているという話でした。
「AIで仕事が楽になると思ってたけど、真逆でした」
数十回もAIとやり取りを重ねて、休むという概念がなくなった、と語っていたそうです。
この言葉が、なぜか他人事に思えませんでした。
検診車の助手席から見える、いつもの景色
ぼくは健康診断の現場で、検診車の運転と受付を担当しています。
現場に着くと、もう受診者が並び始めていることも珍しくありません。準備を整えながら、その日の人数と時間の見通しを頭の中で組み立てる。これが毎回のスタートです。
30人以上並ぶ日は、最後尾の方が30分以上待つこともあります。効率よく回すために、動線を何度も見直してきました。案内の順番、待つ場所、声のかけ方。小さな工夫を積み重ねてきたつもりです。
それでも、クレームがゼロになったことは一度もありません。
「AIで仕事が楽になると思ってたけど、真逆でした」
冒頭で触れた松浦会長の言葉は、AIで記事作成の作業自体は速くなったけれど、やり取りの回数が増えて、かえって時間も気力も使うようになった、という趣旨のものでした。
ぼくはAIの専門家ではありません。むしろ今、ようやく勉強を始めたばかりの立場です。
それでも、この話には引っかかるものがありました。「道具が新しくなれば、仕事は楽になる」という期待は、ぼく自身、現場で何度も持ったことがある期待だったからです。
動線を工夫しても、早く終わることと安心は別物だった
以前、こちらの記事に詳しく書いたのですが、現場での気づきがひとつあります。
クレームの多くは、「待ち時間」ではなく「不安」から生まれている。
(詳しくは「クレームは「待ち時間」ではなく「不安」から生まれる」という記事に書きました)
動線を工夫して、早く回せるようにする。これは大事な取り組みです。でも、それだけでは受診者の不安は減りませんでした。
「いつまで待つのか分からない」という状態そのものが、不満の正体だったからです。
早く終わらせることと、待っている人が安心できることは、似ているようで別の問題でした。ここに気づくまで、ずいぶん遠回りをしたと思います。
道具を変えても、姿勢が変わらなければ同じなのか?
松浦会長の話に戻ります。
AIという道具そのものは、間違いなく速く、便利になっているはずです。それなのに「真逆だった」と感じたのは、道具の性能の問題ではなく、道具との向き合い方の問題だったのではないか。ぼくはそう受け取りました。
現場も同じだったな、と思います。
動線を整えるのは、道具や仕組みを変える作業です。でも、それだけを追いかけていた時期のぼくは、受診者を「早くさばく対象」として見てしまっていた気がします。
道具を変えても、向き合う姿勢が変わらなければ、結果は変わらない。
これは健診の現場だけでなく、AIのような新しい道具にもそのまま当てはまるのではないかと感じています。
50代からAIを学び始めて、感じていること
正直に書きます。ぼくはまだAIを使いこなせているとは言えません。学び始めたばかりで、分からないことのほうが多いです。
それでも、こうして文章にまとめてブログという形にしてみることも、AIの力を借りながら少しずつ進めています。
50代になってから新しいことを始めるのは、正直、腰が重いです。「今さら」という気持ちも何度も出てきます。それでも、道具を怖がって遠ざけるより、まず触ってみて、自分の姿勢のほうを整えることを優先しようと思っています。
道具に振り回されるか、道具を自分の姿勢に合わせて使うか。この違いは、AIに限らず、これまでの現場でも同じだったと感じています。
これからの現場と、道具の付き合い方
健診の現場でも、AIのような新しい道具でも、共通していることがひとつあるように思います。
道具を導入した瞬間に、すべてが楽になるわけではないということです。
動線を工夫したときも、すぐにクレームが減ったわけではありませんでした。受診者一人ひとりの不安に目を向けるようになって、少しずつ変わっていきました。
AIについても、同じような時間がかかるのだろうと思っています。急いで結果を求めるより、まず自分がどう向き合うかを整えることから始めたいです。
まとめ
検診車で現場に着くと、今日もまた列ができています。
「AIで仕事が楽になると思ってたけど、真逆でした」という言葉をきっかけに、道具を変えることと、姿勢を変えることは別物だと、あらためて考えました。
動線を工夫しても、受診者の不安がなくなるわけではなかったように、道具を変えても、向き合う姿勢が変わらなければ結果は変わりません。
50代からAIを学び始めたばかりのぼくにとって、これは自分への戒めでもあります。道具に期待しすぎず、かといって遠ざけもせず、まず自分の姿勢を整えることから始めていきます。
よくある質問(Q&A)
Q. AIを使えば仕事の負担は本当に減りますか?
道具としてのAIは、作業を速くする助けにはなると感じています。ただ、この記事で触れたように、使う人の向き合い方次第で、負担の感じ方は変わってくるという印象を持っています。導入すれば自動的に楽になる、と考えないほうがよさそうです。
Q. 50代からAIを学ぶのは遅くないですか?
ぼく自身、50代になってから学び始めました。まだ勉強中の立場ですが、「今さら」と思う気持ちより、まず触ってみることを優先しています。遅いかどうかより、始めるかどうかの問題だと考えています。
Q. 健康診断の受付でのクレーム対応について、もっと詳しく知りたいです。
こちらの記事にまとめています。あわせて読んでいただけると嬉しいです。 「クレームは「待ち時間」ではなく「不安」から生まれる」
参考
・エイベックス松浦会長「AIで仕事が楽になると思ってたけど、真逆」note記事作成の”苦労”明かす(ITmedia、2026年8月21日)
https://www.itmedia.co.jp/aiplus/article/2608/21/2000000684/
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